実家の空き家ノート

空き家を1年放置すると、家の中で実際に何が起きるか

空き家の管理 / 現地での実感

「盆と正月には帰るから大丈夫」。よく聞く言葉です。ですが年2回の帰省では、傷みは止まりません。人が住まなくなった家がどういう順番で傷んでいくのか、実際に開けたときに見てきたものを書きます。

最初に来るのは湿気です

人が住んでいる家は、無意識のうちに換気されています。窓を開け、風呂を使い、料理をし、洗濯物を干し、そのたびに空気が動いています。誰もいなくなると、これが完全に止まります。

閉め切った家は、外との温度差で内側に結露します。それが畳、押し入れ、北側の壁から順に出てきます。数か月ぶりに玄関を開けたときの、あの匂い。あれはもう始まっている合図です。

厄介なのは、これが見た目にすぐ出ないことです。表面がきれいでも、押し入れの奥や畳の裏はすでに進んでいます。気づいたときには畳と襖の交換になっていることが珍しくありません。

次に、水回りから匂いが上がってきます

排水口には「封水」といって、水が溜まって下水の臭気を止めている部分があります。使われないと、この水が蒸発します。空になれば、下水の臭いと虫がそのまま室内に上がってきます。

台所、洗面、風呂、洗濯機置き場、そして忘れられがちなのが2階のトイレです。年に一度しか行かない家では、ほぼ確実に切れています。

対策そのものは簡単で、行ったときに全部の排水口に水を流すだけです。問題は「行けない」ことの方にあります。

外側は、雨樋から壊れます

落ち葉や土が詰まった雨樋は、雨のたびに水を溢れさせます。溢れた水は外壁を伝い、基礎の際に落ち続けます。これが何年も続くと、外壁の汚れや傷みだけでは済まなくなります。

周りに木がある家ほど早い。掃除さえすれば防げるものが、放置されているために構造の話になっていく。空き家の傷み方で、いちばんもったいないのがここです。

草木は、家より先に近所へ影響します

建物の劣化は所有者の問題ですが、敷地から出た枝と草は、隣の家の問題になります。実際に連絡が来るのは、家が傷んだときではなく、枝が越えたとき、草が道路にかかったとき、蜂の巣ができたときです。

遠方に住んでいる所有者にとって怖いのは、この連絡が「直接は来ない」ことです。近所の人は、県外の所有者の連絡先を知りません。役場や親戚を経由して、何か月も経ってから届きます。その間、印象だけが悪くなっていきます。

そして、生き物が入ります

屋根裏、床下、換気口。人の出入りが完全に止まった家には、順番に入られます。天井にシミが出て初めて気づく、というのが典型です。入られてからの原状回復は、入られる前の予防とは費用の桁が変わります。

傷みの順番をまとめると

時期の目安起きること放置した場合
数か月室内の湿気・匂い、封水切れ畳・襖・押し入れの傷み
半年〜1年草木の繁茂、雨樋の詰まり近隣からの苦情、外壁と基礎への水
1年〜小動物・害虫の侵入天井・断熱材の被害、原状回復費の増大

順番があるということは、途中で止められるということでもあります。実際、月に一度風を通しているだけの家と、年に一度しか開けない家とでは、5年後の状態がまったく違います。

判断を先延ばしにしても、家は待ってくれません

売るか、貸すか、持ち続けるか。その判断がつかないまま時間が過ぎるのは、よくあることです。ただ、判断を保留している間も家は傷み続けていて、傷みが進むほど「売る」も「貸す」も選びにくくなります。

逆に言えば、判断がつかない期間こそ、最低限の管理をしておく価値があります。選択肢を残すための時間稼ぎです。

管理を人に頼む場合に何をしてもらえるのかは、こちらの記事に書きました。